こんにちは!
榎本澄雄です。
2月3日、月曜日。
今日は、立春です。
今日は、
2020年10月8日から
2021年11月2日まで
私がリスク対策.comに
連載していた記事を紹介します。
私はリスク対策.comから撤退し、
過去の記事を削除してもらったので、
現在は閲覧ができない状態となっています。
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2021年1月4日 リスク対策.com
『企業犯罪 VS 知能犯刑事 麻布署6年の研究と発見』
100年企業の成長を今すぐ守る!「捕食者」の検分方法〜その1
第3回 刑法第246条 詐欺罪
第1回の記事はこちらです。
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第2回の記事はこちらです。
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なぜ詐欺師が得するのか?
企業犯罪VS知能犯刑事
麻布署6年の研究と発見 第3回
こんにちは。
元知能犯刑事、榎本澄雄です。
今回は、100年企業の成長を今すぐ守る!「捕食者」の検分方法~その一 第3回 刑法第246条 詐欺罪というテーマでお話しします。
ポイントは3つあります。
1 なぜ、詐欺師は逃げないのか?~詐欺師の生態
2 なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?~告訴相談の切り開き方
3 どのように詐欺師を見分ければ良いのか?~詐欺師の見分け方
です。
1 なぜ、詐欺師は逃げないのか?~詐欺師の生態
これまでお話ししたとおり、私は麻布署刑事課で知能犯捜査係にいました。当時の記憶では、平日に毎日平均1件くらい新規の告訴相談があった印象です。警視庁の警察署では6日に1回から5日に1回の頻度で宿直(朝から翌日までの当直勤務)がありました。
告訴相談は宿直の知能犯刑事が受理していました。相談の8割くらいが詐欺事件の相談だったと覚えています。この「告訴相談」は、ビジネスパーソンにとって非常に重要なキーワードですから、別途、説明します。
「いやぁ、実は私も困ってるんですよ……」
詐欺師はこのように言い訳しながら、警察署へ出頭してきます。
今回、主にお話しする詐欺師は、「オレオレ詐欺」など顔の見えない犯罪者ではありません。あなたの周りに普通にいて、普通の暮らしをしながら、獲物を物色。日々、ホテルのラウンジなどで「商談」をしている詐欺師です。
一般に告訴事件の相手方(容疑者、被疑者、参考人)は、刑事が電話を掛ければ応答しますし、警察署に呼び出せば、事情を話しに出頭します。出頭しないと、却って警察に怪しまれることを知っているからです。
もちろん、窃盗や強盗、恐喝など盗犯事件や強行犯事件で、刑事が犯人に電話を掛けて呼び出すようなことは普通しません。飛ばれる(逃亡される)からです。また証拠隠滅されたり、被害者に報復、仕返しすることも考えられます。同じ理由から、詐欺事件でもオレオレ詐欺の犯人に安易に電話を掛けて、呼び出すような捜査はしません。
一般刑事事件と異なる告訴事件の特徴は、2つ。
1 相手(犯人)が誰かわかっている
2 民事事件(商取引上のトラブルなど)を「仮装」している
中には刑事事件になり得ないケースもありますから、知能犯刑事は書面などの基本的な任意捜査(「基調」と言います)を済ませ、関係者を電話などで呼び出して、任意に事情聴取した上で、慎重に判断します。
ここで「刑法第246条 詐欺罪」の条文をチェックしておきましょう。
刑法
第246条(詐欺)
1 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪は、以下の「4つの要素」が因果的に連鎖することで、構成要件に該当します。
1 欺罔→2 錯誤→3 財産的処分行為→4 財物取得(または不法利得)
人を欺く(欺罔)とは、騙された人が間違って(錯誤)、財物を交付(財産的処分行為)してしまうような行為です。言葉でも動作でも、直接的でも間接的でもよく、作為、不作為も問いません。
欺罔行為は、相手を錯誤に陥らせるものであれば、その内容が「虚偽の事実」でも、「真実」でも構いません。全くの嘘であれば詐欺の意思は明白になりますが、「真実の事情」を話しながらも、一方で「支払いの意思」や「支払いの能力」など本人しか知り得ない「内心」を偽る詐欺もあります。
「誇大広告」の場合、直ちに「欺罔」とはなりにくく、商慣習上、ある程度は許されることも多いのですが、「取引の重要部分」において事実の虚構があるとき、例えば「その嘘がなければ購入しなかったであろう」と判断される場合、誇張や隠蔽が小さくても「欺罔」行為と解されて、詐欺罪が成立します。
ですから、ある商品の売買において、店主が商品の品質(取引の重要部分)について、顧客に「虚偽の事実」を申し向け(欺罔)、本来であればその顧客が買わないであろう「粗悪な商品」を顧客に購入する決意(錯誤)をさせて、商品の対価として顧客がお金を支払った(財産的処分行為)場合でも、詐欺罪が成立する「可能性」はあります。ただし、私が捜査してきた経験では、記憶をたどる限り、検挙事例は思い浮かびません。
「灰色」の世界
ここまでお読みになって、かなりモヤモヤされたと思います。
そうです。詐欺とは「黒」とも「白」とも言い難い、何とも「灰色」の世界なのです。
ベテラン犯罪者が詐欺師を目指す理由がここにあります。「詐欺をやっても捕まりにくい」のです。
「内心」の立証方法はあるのか?
それでは、「内心」を立証する方法なんてあるのでしょうか?
取調室でいきなり詐欺師が「真実」を告白するとは、私にはとても思えないのですが……。
「返すつもりだった」
「払うつもりだった」
「しかし、経済的に困窮して支払えなくなってしまった」
債務の不履行に対して、当然、このような抗弁が想定されます。
詐欺のように外見的に「見えない犯意」を立証するには、徹底的に状況証拠を積み上げて、客観的、総合的に判断します。
当時の私の記憶を呼び起こすと、次の6つを「詐欺罪が成立するかどうか」の判断基準としていました。
1 欺罔(と思われる)行為の内容は、真実か虚偽か?
2 同一手口の同種事案が発生していないか?同じ人物の余罪は無いか?
3 経済的な状況、借財状況、支払能力は信用に足るか?
4 前科前歴の有無、特に同一罪種の犯罪歴は無いか?
5 反社会的勢力との交流は無いか?
6 任意の呼び出しに応じるか、逃亡のおそれはないか?
講学的には、その欺罔とされる「行為」が、信義誠実の原則に照らして、社会的に公正かどうかで判断するようですが、現場で刑事をやっていた私の立場からすると、「行為」ではなく、「人物」で判断していました。
つまり、その「人物」が、正直か、誠実か、公正かどうかで私は判断しました。もっとわかりやすく言うと、「悪いヤツかどうか」。その人物を「懲らしめるべきかどうか」でした。私のような「行為ではなく人に対する価値判断」に対して、人道的に非難をされる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これが現場で知能犯刑事をやってきた私の考え方です。
最後に「詐欺師の生態」を理解するのに、今すぐ役立つ2つの言葉をお伝えします。
1 「それって、本当なの?」
2 「その根拠は?」
自社にとって比較的大きな取引がある時、魅力的な人物に出会った時、心の中でこの2つの言葉を唱えてみてください。次回の記事でもお話しします。
次回は「なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?~告訴相談の切り開き方」についてお話しします。
危機管理・BCPの担当者さまから、ご質問、ご相談やご意見などお待ちしております。
参考文献
『大コンメンタール刑法 第13巻〔246条~264条〕』大塚仁+河上和雄+佐藤文哉+古田佑紀=編(青林書院)
『刑法各論』安西溫=著(警察時報社)
なぜ詐欺師が得するのか?
企業犯罪VS知能犯刑事
麻布署6年の研究と発見 第3回
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