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犯罪捜査とホスピタリティ

元刑事の予備校講師が語った学修デザインの秘密 第2回

2024年8月4日

こんにちは!

榎本澄雄です。

8月4日、日曜日。

今日は、新月です。

8月7日は、立秋。

夏の土用が明けます。

犯罪捜査とホスピタリティ

元刑事の予備校講師が語った

学修デザインの秘密 第2回

2015年の

インタビュー記事

第2回を紹介します。

元刑事、榎本澄雄と

教育、ビジネスの原点を

読み取ることができます。

CREM(クリム)連載

そこはかとなく好奇心を刺激するクリエイターの秘密基地。

 

原題

教育・研修系のファシリテーター必読

元・刑事が語るファシリテーションの極意

 

2015年7月20日公開

CREM編集部(当時) 丸山亜由美さん執筆

 

当時のURL(現在はクローズ) http://cre-m.jp/sumiwo_02/

【第2回】取調べ室からひも解くファシリテーション:犯人をも協力者にできる刑事のホスピタリティとは?

「反転授業」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?反転授業とは、基本的な知識を自宅などで事前に予習し、教室の授業では問題演習やグループで課題を解決するという授業スタイルです。教える教育から、生徒が自ら学ぶ教育へ。学校や塾などが反転授業の形式を取り入れることで、先生が求められる役割というものも少しずつ変わって来ています。

 

榎本澄雄さんは、大学受験予備校で英語を教える「塾講師」ではなく、生徒自身が積極的に学びたくなる授業を展開する「ファシリテーター」。一方的に知識を教えるのではなく、授業が楽しくなるきっかけや、チームで問題に取り組む生徒同士の繋がりを作っています。

 

なぜそのようなコミュニティーを作れるのか?実は榎本さんは元・刑事。ファシリテーションの技術は、事件解決へのアプローチから身についたといいます。今回は予備校での取り組みと、普段はなかなか伺えない警察の内情を全3回の連載でお送りします。

 

(執筆:CREM編集部 丸山亜由美さん)

クリエイター:榎本すみを(ファシリテーター)

愛媛県出身、早稲田大学人間科学部卒業、元・警視庁知能犯罪捜査官

ファシリテーションを地域に拡大し、コミュニティーデザインも手掛けるkibi 代表取締役

特技のダンスは元・ZOOと共演したほどの腕前、ダンサーとしての一面も

・株式会社kibi:https://www.kibiinc.co/

第1回の記事はこちらをご覧ください。

👇

取調べ室のファシリテーション技術

元刑事の予備校講師が語った学修デザインの秘密 第1回

https://www.kibiinc.co/blog/2023-9-3

【第2回】取調べ室からひも解くファシリテーション:犯人をも協力者にできる刑事のホスピタリティとは?

1.事件は会議室で作られている

2.敵とも仲良くなれる、刑事のおもてなしとホスピタリティ

3.質問で知りたいのは、その答えではなく「反応」

1.事件は会議室で作られている

事件解決のために協力者をどう作るか?警察でのご経験が、現在のファシリテーションに繋がっているという榎本さん。その土台を作った警察時代について、お話を伺いました。

 

--警察でのお仕事について教えて頂けますか?

 

榎本さん(以下敬称略)警察は心の闇を見る仕事。人の色々なことを知る。事件を見ながら、世の中でこうすればいい、ああすればいいと割り切れないことが沢山あることに気づいたんです。人の心の「機微」が分からない人は、数字でものを見ようとする。でもそういう人ほど、警察内部で偉いポストに就いて箔を付けることを狙っていたりして、結果的に組織が不祥事を起こしたりする。数字よりも筋、という言葉があって。刑事もよく使うんです。この事件はこの筋だね、という具合に。」

 

--筋というのはどういう意味合いで使われるのでしょうか?

 

榎本ストーリーとか方向性という意味です。刑事が事件のストーリーを決めてしまったら、それって冤罪とか起こるんじゃないの?ということになりますが、そういう危険性は確かにあります。もしかしたらこうかもしれない、その可能性に乗って追ってゆこうという流れであればいいですが。可哀想な被害者のために、何とか悪い被疑者をやっつけよう、こういうストーリーも作ることができるんです。」

 

--何をどう事件にするかは警察次第、ということもあるんですね。

 

榎本著名人の場合は特にそうです。普通の人なら事件として騒がれないことが事件になる。本人達は「なんで事件なんかになるんですか?」と言うけれど、彼らだから事件になるんです。捜査二課も東京地検も、なぜ選挙違反や贈収賄などの大きな事件をやるかというと、組織の知名度と影響力が増すからやっているんです。」

 

--社会的に影響力のある人ほど、事件としてのインパクトが大きいと。

 

榎本「法律的な観点から言えば、誰だって法律を犯しているかもしれない。犯罪とは、法律に違反していて罰則が伴うことを言うんです。多くの人は何が違反かをよく分かっていない。だからどうしても「不良」を検挙したいと思ったら、「お宅のワンちゃん、最近予防接種受けてませんね?!」と逮捕状を請求する。普通は逮捕状なんて出ないけれど、悪いやつだから捕まえようとするんです。法律上は捕まえることができるので、社会的に必要だと判断されれば捕まえる。」

 

--警察が事件を作っている、という見方もできますね。

 

榎本「はい、もちろんそういうことが無いようにはなっていますが…。でも法律を駆使すれば、結構なんでも捕まえることはできる。法律のすごいところは、その辺の自由度が高いこと。世論、世の中に対してどう貢献するか、という見方が大きいんです。」

2.敵とも仲良くなれる、刑事のおもてなしとホスピタリティ

榎本「警察にいると家庭のこと、職場のこと…人の色々な場面を見る。不倫もあれば不祥事も。すごい重いカルマを背負ってきた人が管理職になると、パワハラで部下が辞めたりする。部下が精神安定剤を飲んで出勤したり、場合によっては自殺してしまったり。それだけ聞くと酷い世界だと思われるかもしれないけれど、世の中にはどこの職場にもそういうことがある。これはエネルギーの奪い合い、会社は社会の縮図なんです。」

 

--確かに、警察内部に限ったことではないですね。

 

榎本「そういうのを見てきたから、人のことがよく分かるんです。もう1つセンスとして身に付いてゆくのが、ホスピタリティ。刑事のホスピタリティはすごいから、きっとびっくりすると思う。刑事のおもてなしって。」

 

--刑事さんもおもてなしをするんですか?

 

榎本ホスピタリティの語源は、hostile=敵。サービスというのはservant=召し使い、という説があります。サービスというのは相手を見ないで、何かをすることですね。ホスピタリティの場合、相手は敵なんです。では敵と仲良くする為にはどうするか?この人を喜ばせるためにどうすればいいかを真剣に考えるわけです。どういう話し方をすればいいか、どういう「ギフト」を渡したらいいか…それを学ぶのが刑事、取り調べ室なんです。」

 

--どうしたら事件について喋ってくれて、事件解決になるかと?

 

榎本「どうすればこの人を協力者にできるか、協力してくれる人になるか、それに尽きるんです。その人が誰であっても、犯人であっても、被害者であっても、参考人でも…その人が味方になってくれれば、事件解決に繋がるかもしれない。犯人は刑事から見れば敵。でもその人といかに仲良くなれるか、心の交流を持てるかを考えるわけです。ホシが留置場で読んでいる本は自分も読みます。何読んでるの?と聞いて、俺も読んでみようって。相手が好むものを知る努力をする。そういうことをやっている人って意外と少ないんです。」

 

--心の中にあることを喋ってもいいかな、と気を許したくなりますね。

 

榎本「もちろんそういうことに慣れている人はブロックするけれど、刑事は試みるわけです。相手に本当のことを話してもらうために。これは多くの刑事は言わないだろうけれど…もっと言うと、「愛」なんです。この人はこの罪を犯してしまった。もしくは無実かもしれないけれど取り調べを受けている。この人に、またもう一度同じことをして欲しくない。捕まえるまでは犯人にポジティブな感情はないけれど、捕まえてぽつぽつ喋り始めたら「こいつに早く出て欲しい」という気持ちになるんです。」

 

--協力者になってくれた時から、敵ではなくなるんですね。

 

榎本もっと幸せになって欲しいと情が沸くんです。出所した後に、またもう一度同じことをして欲しくない。そのためにはどうすればいいかを必死に考えるんです。昔、担当した被疑者に、最近元気にしてる?と時々連絡をする刑事もいます。」

 

--そういうコミュニケーションが塾のファシリテーターとして役に立っていると。

 

榎本「そうやって捕まる人って、言ってみれば素行不良者。そういうタイプの子に塾でどう接するか?「宿題やってきたの?」とは聞かないですね。スネたりすることが分かっているから。いかにその子に幸せな人生を送ってもらえるようにサポートできるか、理屈よりも情なんです。そういうことを刑事の教官から教わった。シブくて、粋な教官が多かったですよ。かっこいい、人間的に魅力のある人が。」

3.質問で知りたいのは、その答えではなく「反応」

榎本「いかにこの人と人間関係を築けるかということを考えたとき、刑事で磨いてきたセンスが1番役に立ったと思う。お茶汲み3年という言葉があって、伝統としてそういう訓練を受けてきた。暑い日、先輩が帰ってきたら冷たいお茶を出す。その人を察して、その人に合わせて出す。それは自分なりの気遣いで、ホスピタリティ。その人を知って気を使うわけです。でも、気を使わせてしまって申し訳ないと思わせないくらい自然に。その裏には、その人を怒らせると大変なことになる、先輩・上司=敵、というのがあるわけだけれども(笑)。」

 

--先ほどの犯人像と一緒ですね。

 

榎本「その人を知るためには、やはり表情あとは目線、指先、足先などの細かいところから情報を読み取ります。職務質問で何十人か捕まえたことがあるけれど…刑事が質問をする意図は、何か答えを聞きたいわけではないんです。授業のディスカッションで、「この問題をどう考えますか?」ということを聞きますが、大切なのは答えじゃない。どんな雰囲気で答えるかなんですよ。」

 

--質問の答えではなく雰囲気、それはどういうことなんでしょうか?

 

榎本細かく言うと目線、目がどういう動きをしているか。あとは指先、足先、声のトーンと表情。それってノンバーバルなすごい情報で、めちゃくちゃ大切なんです。答えではなく、反応を知るために聞く。でもあまりそういうことを言うと警戒されるから、この人に見られているな、と(笑)。」

 

--今、相手がどういう感情なのか。それを感じ取れるのが大切なんですね。

 

榎本「昨日も授業をしていて、男の子がとてもいい笑顔だった。それが嬉しくて。やっぱりマニュアル対応していると、人間はロボットみたいになってしまう。それを子供は本当によく見ているんです。彼らが目標を持って勉強したり、分からないことに分かるまでつき合ったりするのは、もちろん大切。でもそれ以前に、彼らと人間関係を築いてゆくのが、すごく楽しくて。そのことについて、彼らがとても満足感を得ている。楽しければ勉強をするようになるし、質問にも来るようになる。結果的に塾も辞めなくなる。それをマニュアルみたいにして心が入っていないと、人間はめちゃくちゃ敏感だからすぐに分かってしまう。」

 

--そうすると一気に人間関係が冷めていってしまう。

 

榎本そんなことをする位なら、やらない方がいい。実際、どこでも最初は型を習う。それは初めは大切なことかもしれないけれど、いつまでも全員が同じことをやっていたのではロボットみたいで気持ち悪いんです。サービスはマニュアル、ホスピタリティはマニュアルがない対応ができること。マニュアルがない対応ができるのが刑事、ですね。」

罪を犯して逮捕された犯人にも、勉強ができない不真面目な生徒にも、幸せな人生を送ってもらえるようにと愛をもって触れ合うこと。そんなホスピタリティの精神を持てば、自分の味方ではない人であっても人間関係を築けることが分かりました。

次回は最終回、警察を辞めるに至った経緯と今後の展望を伺います。

 

(執筆:CREM編集部 丸山亜由美さん)

クリエイター:榎本すみを(ファシリテーター)

愛媛県出身、早稲田大学人間科学部卒業、元・警視庁知能犯罪捜査官

ファシリテーションを地域に拡大し、コミュニティーデザインも手掛けるkibi 代表取締役

特技のダンスは元・ZOOと共演したほどの腕前、ダンサーとしての一面も

・株式会社kibi:https://www.kibiinc.co/

丸山さん

ありがとうございました。

元刑事、榎本澄雄と

教育、ビジネスの原点を

読み取ることができました。

改めて読むと、

最近ではあまり言わないこともあるし、

今でも変わらず言い続けていることがありました。

第3回の記事は、

また別途kibi logで紹介します!

第1回の記事はこちらをご覧ください。

👇

取調べ室のファシリテーション技術

元刑事の予備校講師が語った学修デザインの秘密 第1回

https://www.kibiinc.co/blog/2023-9-3

こちらは、

同じく早稲田塾で同僚だった

人気世界史講師、鈴木悠介先生のYouTubeインタビュー。

必要な方は、

今すぐご覧ください。

👇

すずゆうチャンネル

【元刑事の予備校講師】刑事ドラマの設定について榎本先生に聞いてみた!

https://youtu.be/GVGCTEh9Ol8?si=Z209XASQCJcoVts0

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